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絶対に思い出にしかならなかったあの時間―――菊池健雄『ハローグッバイ』

 

8月14日夜、ユーロスペースにて、菊池健雄監督『ハローグッバイ』。

初夏の思い出の透明みたいな映画、よかった。

 

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高校二年生の夏、元カレの子どもを妊娠したかもしれないカースト上位美少女はづきと実は万引き繰り返すパシリ優等生委員長あおい、仲良くなるはずのない二人が認知症の老婦と出会って、そのおばあさんの初恋の人を探すことになり、友情のようなものを見出してゆく。

 

はづきは常に友達グループ4人で行動し、いつもLINEの通知音が鳴りやまないけれど、そんなのは孤独から目を背ける間に合わせだ。ただこの教室という世界で生きていく方法。妊娠疑惑の相手である元カレの今カノが同じグループにいる居心地の悪さ。他二人は気持ち悪い伺い合いをしている。応援してくれてるんだよね、私たち、友達だよね。心、誰ともつながっていない。本当の味方がどこにもいない。一方、優等生で委員長でお金持ちでパシリで友達のいない葵は学校にも家庭にも孤独を抱え、それを紛らわすために万引きを繰り返していた。

 

そんな二人だったのに。そんな二人だったから?誰にも言えない、言わなくてもいいような孤独を抱えていたから。でも誰かを希求する心がたしかにあったから。助けてくれなくっていいよ。もしかしたら、誰でもよかったのかもしれない。君の暗闇が発光して教室の天井に主張する、私は気づいてしまったんだよ。誰にも言えない苦しみが君にもあるってことだけ知れた喜び。

 

最も身近な人間関係に疲れてしまっても言い出せないのは無論その関係を崩したくはないからで、だからこそ少し離れた、人間関係に乱れを及ぼさない人には気楽に話せたりするものである。自分の高校時代を思い出す。一年生の時に体育をサボって保健室に行ったらサボっている保健室の常連ぽい三年生の女子の先輩(関係ないけどすんごい美人)がいて、初対面の僕に向かって一時間ずっと最近クラスの中で何があってどうつらかったかということを話してくれて、その後卒業するまで校内で見かけるたびに会釈したな。あの保健室にいた時間しかゆっくり話したことはないし、もうSNSすらつながっていないけれど。

 

認知症の老婦は、助けてくれた二人のことを二人が帰る頃にはもう忘れてしまっていた。私たちのことだってそれでいいよ、忘れてもいいよ、でもたしかにあの時のわたしたちには心のつながりがありました、もはや時すら超えて。「安心して、明日から話しかけないから」本当に話しかけないからね。またいつも通りの日々だから。元通りになるだけだから。そうやって生きてきたから。

 

もう二度と話さないかもしれない。二度と目を合わせないかもしれない。絶対に思い出にしかならなかったあの時間。心にだけ残ってゆく宝物。いつか忘れるかもしれない。別に恋しくは思わないかもしれない。でもいつでも思い出せるんだよ、あの旋律を身体が忘れてはくれなかったから。

 

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